2010年12月02日/ おぼえがき

大澤真幸と宮台真司の提案

大澤真幸THINKING「O」第8号
今年の4月、『大澤真幸 THINKING「O」』という月刊の雑誌が創刊されました。社会学者の大澤真幸の発行する個人誌で、前半が大澤とゲストの対談、後半が大澤の論文という二部構成になっています。

その「O」の最新刊、『大澤真幸THINKING「O」第8号―「正義」について論じます』の対談部分を読みました。

第一線で活躍する社会学者同士の対談ということで、専門用語もたくさんあり難しかったです。まだよく理解していないところの方が多いと思いますが、話の流れが本当にスリリングです。

沖縄のことも論じられています。大澤、宮台両氏ともに沖縄への具体的な提言をしているのですが、このことはぜひ多くの人に読んでもらいたいし、一緒に考えたいことだと感じます。理想だ、きれいごとだ、不可能だという反発も必ずあると思いますが。

(以下のコメントは、かっこの中や引用箇所以外は、私の言葉です。)

関心を寄せる部分に細かい違いはありますが、両氏の見解は、大筋で共通しています。

まず、「県外」移設を主張するだけでは不徹底だ、ということ。沖縄の歴史をかんがみて、そう主張する気持ちは理解できる。でもそう主張すると、自分たちの負担さえ減らせればいいと考えているようで浅ましくなってしまう、と。

そうではなく、「圏外」移設、つまり普天間基地に代わるものはどこにも要らない、と主張するべきではないか。そのために、徳之島と沖縄の首長が結集して、「普天間基地圏外移設首長連合」を作るのはどうか。これは大澤が主張するところです。宮台も反論していません。

そして、(困難ではあるが)沖縄は自立の道を模索すべき、というのが両氏の見解。これについて、宮台が3つの提言をしています。飛ばしながら、大筋を引用します。

(宮台はときどき(いつも?)挑発的な言い方をするので、ヒヤヒヤするのですが・・・このアクの強さも魅力ではありますが、いらない反発を招きそう、と余計な心配をしてしまいます。)

(・・・)沖縄がやるべきことは、明らかです。第一に、日米政府による頭越し合意はいかなるものも受け入れないと宣言せよ。(・・・)
 第二に、2010年6月現在34を数える在沖米軍基地について、それぞれ異なる返還期限を設定した上で、近隣市町村が基地の跡地利用計画を、具体的に策定せよ。(・・・)
 第一と第二を合わせれば、日本政府は「沖縄がこうした緻密な将来構想を持つので、日本政府はそれを尊重する。沖縄がもつ将来構想と矛盾しないように基地政策を見直してほしい」と正当性を動員しつつ交渉できます。このやり方以外ありません。(・・・)
 第三に、周辺自治体の町村レベルの人々の跡地利用計画の策定と平行して、県レベルでは、フリートレードゾーンを一部として含む、小規模な特区を超えた、税金だけでなく土地利用や物流やギャンブルや性産業にまたがる「一国二制度」を要求せよ。(・・・)
(・・・)「日米合意×反対運動×補助金」のリンクを断ち切るべし。

『大澤真幸THINKING「O」第8号―「正義」について論じます』 32~35ページ)

とても高度なことを要請されていると思います。特に3番目。香港のような位置づけということですよね。私にはまだ、この提言に関する議論を知りませんが、ぜひ追ってみたいです。

対談のテーマは「正義は可能か?」で、沖縄の話だけではありません。ここで話されている「正義」(かっこがついています)とは、平たく言えば、「みんな」(これもかっこつき)のために、という気持ちの持ち方。結論としては、「不可能だが不可欠」ということです。

共同体か個人かという二項対立はもう古く、共同体のなかでいかに自律的であるかが問題だ、という指摘が印象に残っています。

かなりかいつまんで紹介しました。興味を持たれた方も、反発を覚える方も、ぜひご一読ください。


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Posted by あゆ at 01:43│Comments(5)
この記事へのコメント
大澤真幸ファンというか、影響を受けている一人として、
関心があります。
研究職をお辞めになったあと、このような活動をなさっていたのですね。
さっそく、手に入れて読んでみたいと思います。
Posted by 踊狂教員 at 2010年12月15日 17:18
コメント、ありがとうございます。
活動というより、まだ本を読んだり、資料を集めたりしているだけですが。

論文の部分は私もこれからです。
最近ちょっと読むのを休んでいましたが、そろそろ再開しようと思います。
Posted by あゆあゆ at 2010年12月16日 20:32
いえいえ、(汗)
あゆさんの研究は、これからでしょう。
大澤真幸さんのことを「研究職をやめた」(普通退職したらしい)じゃないですか。。。
ということですよ~~。
国語は難しいですね。。
ブログを読んだあとの文脈につないでコメントするからかな。。
関係ありませんが、
与那原恵『美麗島まで』だったかな
かなり興奮して読みました。県立博物館・美術館の美術館の第一番目の作品に藤田嗣治の油画のある理由が、この本で初めて知りました。
Posted by 踊狂教員 at 2010年12月18日 21:35
あ、そうでしたか・・・(大汗)!
研究職=大学教授職
ということだったんですね。

大澤さんについては、自身の研究に専念するために大学を去ったんだろう、と私は理解していたので。

『美麗島まで』、評判いいですね。
読んでみたいリストに入れておきます。
ありがとうございます!
Posted by あゆあゆ at 2010年12月18日 22:11
はじめまして。。
私も宮台真司さんのお話は好きです。。
ネット動画でちょこちょこ見ます。。
あと宮崎哲弥さんも好きです。。
Posted by tsukasa104 at 2011年01月13日 15:11
 
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