2008年07月08日/ 沖縄の詩誌

1999 第6号

1999 第6号 「1999」第6号*が、5月末付けで出ました。表紙が灰色になっていて、少し趣きが変わっています。ちょっと不気味な感じの人形が、こちらを見ています。

 53ページと薄めで、読みやすい量です。同人による詩が8編(2編×4人)で、そのうち伊波泰志さんの特集が組まれています。「寝転がる人々」が面白い。

散歩をしていたら広い
歩道の路上男女が数十
人思い思いの格好で寝
転がっていて、先に進
みづらくて一番近くに
いた若い女に「これは
どうしたんですか」と
尋ねると「流行ってん
の」と言い、隣で寝転
(以下略、「寝転がる人々」より)

1999 第6号  10字の行が続いたかと思えば、真ん中のほうでアーチが現れます。これまでこの詩誌に載っていた伊波さんの詩のなかでは、新しい試みで(確か・・・)、形式、内容ともに新鮮でした。「ロンサム・キング」もいいなと思ったのですが、タイトルが安易な感じなのが残念。内容の重さとバランスをとろうとした軽さなのかな、という気はしましたが、やはりなぜ英語なのかが伝わってきませんでした(過去の「リザード」「サヴァイブ」「ヤングメン」なども)。

 松永朋哉さんの詩を読んで思うのは、ありふれた言葉がありふれたもののままでいて残念だということ。「運命論者」「脱出ゲーム」の2作品から、作者の感じている閉塞感は伝わってくるのですが、「未来」「希望」「運命」「挫折」「苦悩」「悲しみ」「試練」「理不尽」「罪」「楽園」「神」(すべて「運命論者」より)などの言葉が、あまりにも直接的なせいか、よそよそしく感じられました。ただ、「希望はとうの昔に消えたから/私は運命を信じた」というところは作者の世界だと思ったので、そこをもっと見たい気がします。

 宮城さんの2作品「雪」「川」は、題も示すとおり、短くたたずんだ詩。雪は「見えない」し、重さもないけど「とけな」くて、おまけに「鼓膜を刺激」し、「こころとからだを押しつぶ」し、「たましいを押しつぶす」。青い空と緑の芝生の風景に「無機質な亀裂」、つまり「金網」が入ることが、その雪を降らせているのかもしれません。

 内間武さんは、タイトルのつけ方が秀逸。タイトルの言葉自体は、「いじめ」「借金」と普通ですが、対応する詩の内容と絶妙な距離を保っているのです。以下は、「いじめ」の全部引用です。

巨大な太陽に照らされ
真っ赤に焼けたアスファルトから滲んでいる
陽炎で歪む世界
地球の真ん中にある意思はもがき
何とか這い出る場所を探している
徐々に世界が震える
小さな揺れに気づく者はいない
誰かがそれに気づいた時は手遅れで
アスファルトを突き破り噴火したマグマが
この世界を飲み込んでいった

 それから、新しい試みとして、「つぎの琉球詩壇」と題された投稿欄が設けられています。「1999Web」の投稿掲示板に投稿された詩のなかから掲載作が選ばれ、宮城さんが評しています。氏の「誉める技術」には、学ぶところ多し。

 長くなってしまいました。あいかわらず文句も多くてごめんなさい。これからも楽しみにしています。

---------------

* 寄贈していただきました。この場を借りて感謝申し上げます。


同じカテゴリー(沖縄の詩誌)の記事
1999 第2号
1999 第2号(2006-10-19 13:07)


Posted by あゆ at 07:00│Comments(4)
この記事へのコメント
メンバー全員の作品について、丁寧に批評していただき、ありがとうございます!
Posted by ヒロコ at 2008年07月08日 22:33
いえいえ、批評というより感想のつもりです(でも「残念」とか多くて、「あんた誰?」って感じだなと自分でも思います・・・)。

何かもっと生産的な感想が言えるようになりたい、といつも思いながら書いています。
Posted by あゆあゆ at 2008年07月08日 23:16
ありがとうございます。松永の作品に対する指摘や、内間の作品に対しタイトルと詩の内容とが絶妙な距離を保っているとの指摘など、わたしには見えていなかった点に気づかされました。同人の作品は、近すぎて客観的な読みが難しい点があります。あゆさんの鋭い批評眼で、わたしにとって新たな読みを提示していただきました。今後もよろしくお願いします。
Posted by みやじ。 at 2008年07月13日 01:42
こちらこそ、さっそく送ってくださってありがとうございました。仕事を持ちながら刊行を続けていくのは本当に大変なことだと思います。とても励みになっています。

いつも言葉足らずで、一感想とはいえ批判される側は不愉快な気持ちになることもあるかもしれないと恐れています。いずれ、私がなぜ(特に若い人の)詩に関心をもっているか、詩作という行為に何を見ているかといったことを、少しずつ書いていけたら、と思っています。
Posted by あゆ at 2008年07月15日 00:18
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。