2006年02月26日
1999 創刊号/作品評(6)―宮城隆尋
〈俺〉が〈お前〉に延々と発する台詞のみから成る、宮城隆尋「かさぶた」。明らかに米兵による少女暴行事件を連想させる。〈だいたいなあ/そこに居たお前が悪いんじゃねえのか〉と、〈お前〉に責任転嫁する〈俺〉。作者が、断罪の対象そのものに憑依してみせることで、より強力に断罪する効果を生んでいる。読者は〈お前〉と重なる――つまり被害者の立場を強いられることになるので、恐怖や憤りといった「熱い」感情をかき立てられ、他人事ではなく我が身のこととしてこの事件に巻き込まれることを余儀なくされる。淡々と続くおぞましい台詞の裏には、書き手の底知れぬ怒りが潜んでいる。
他方で、何か足りないとも感じた。おそらく、これよりほかの読み方が難しいということだろうか。上で述べたように、この作品は、解釈や分析といった理性的な行為を要請するものではなく、感情を刺激し、読者を事件の当事者にする。読者が男性か女性かによっても感じ方は違ってくるとは思うが、どちらにせよ読者は限りなく受身の状態になる。詩を読んでいる途中、冷静な判断をする余裕は、読者にはほとんど残されない。状況があまりにリアルなせいもあるか。それゆえ、擬似体験の場としてはかなり高い効果を発揮する作品。タイトルが何故「かさぶた」なのかは、いくら考えてもわからない。
宮城隆尋の作品中、このような諷刺路線で成功しているものに、昨年終刊した詩誌「キジムナー通信」に掲載された「ゆいまーるツアー」がある(サイト「ごまめのはぎしり」に全部引用されている)。〈ゆいまーるツアー〉の添乗員の案内という形を取るこの詩には、「かさぶた」の持つ負の感情刺激効果に加えて、ブラックな笑いを誘う力がある。笑えるということは、何かを判断できる余裕も残されているということだろう。「かさぶた」と違うのは、批判すべき状況が、これでもかと誇張されて描かれているところ。読者は「あり得ない!」と驚き、笑いつつ、次の瞬間には「でも本当にあり得ないことなのか?」と笑いをひきつらせる。これぞ諷刺だと思う。
宮城隆尋は1980年生まれ。首里高文芸部、沖国大文芸部を創始、初代部長を務めた。詩集『盲目』(1998) で、1999年に第22回山之口貘賞を最年少受賞(18歳)。2005年に詩誌「1999」を立ち上げる。その他の詩集に『自画像』(1997)、『idol』(2002)。
http://plaza.rakuten.co.jp/mogegegege/
他方で、何か足りないとも感じた。おそらく、これよりほかの読み方が難しいということだろうか。上で述べたように、この作品は、解釈や分析といった理性的な行為を要請するものではなく、感情を刺激し、読者を事件の当事者にする。読者が男性か女性かによっても感じ方は違ってくるとは思うが、どちらにせよ読者は限りなく受身の状態になる。詩を読んでいる途中、冷静な判断をする余裕は、読者にはほとんど残されない。状況があまりにリアルなせいもあるか。それゆえ、擬似体験の場としてはかなり高い効果を発揮する作品。タイトルが何故「かさぶた」なのかは、いくら考えてもわからない。
宮城隆尋の作品中、このような諷刺路線で成功しているものに、昨年終刊した詩誌「キジムナー通信」に掲載された「ゆいまーるツアー」がある(サイト「ごまめのはぎしり」に全部引用されている)。〈ゆいまーるツアー〉の添乗員の案内という形を取るこの詩には、「かさぶた」の持つ負の感情刺激効果に加えて、ブラックな笑いを誘う力がある。笑えるということは、何かを判断できる余裕も残されているということだろう。「かさぶた」と違うのは、批判すべき状況が、これでもかと誇張されて描かれているところ。読者は「あり得ない!」と驚き、笑いつつ、次の瞬間には「でも本当にあり得ないことなのか?」と笑いをひきつらせる。これぞ諷刺だと思う。
宮城隆尋は1980年生まれ。首里高文芸部、沖国大文芸部を創始、初代部長を務めた。詩集『盲目』(1998) で、1999年に第22回山之口貘賞を最年少受賞(18歳)。2005年に詩誌「1999」を立ち上げる。その他の詩集に『自画像』(1997)、『idol』(2002)。
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http://ayu.ti-da.net/t692772
この記事へのコメント
こんばんは。お久しぶりです。
詩誌「1999」創刊号の批評、一通り読ませていただきました。
あゆさんの分析力に本当に脱帽です!私もこれくらい良い批評ができたらなぁと思います。(冷静な視点を持ちたいなと…)
メンバーの作品、そして私の作品も、とても丁重に読んでいただけて大変嬉しいです。作者の私でさえも、あゆさんの批評を読んではじめて気づいたこともいくつかありました。びっくりです。
また第2号の批評もアップしていただけるのでしょうか。どうぞズバズバ斬っちゃってくださいね!とても楽しみです。
それでは。
詩誌「1999」創刊号の批評、一通り読ませていただきました。
あゆさんの分析力に本当に脱帽です!私もこれくらい良い批評ができたらなぁと思います。(冷静な視点を持ちたいなと…)
メンバーの作品、そして私の作品も、とても丁重に読んでいただけて大変嬉しいです。作者の私でさえも、あゆさんの批評を読んではじめて気づいたこともいくつかありました。びっくりです。
また第2号の批評もアップしていただけるのでしょうか。どうぞズバズバ斬っちゃってくださいね!とても楽しみです。
それでは。
宮城信太朗 at 2006年02月26日 19:31
信太朗さん、コメントありがとうございます。そう言っていただけてうれしいです。掌編小説のところでは、息切れしてしまってごめんなさい。
第2号についても、少し間をおく予定ですが、必ず紹介します。ただ、次回からは今回のように逐一評するのではなく、作品を絞らせていただこうかと思いますので、ご了承くださいね。
第2号についても、少し間をおく予定ですが、必ず紹介します。ただ、次回からは今回のように逐一評するのではなく、作品を絞らせていただこうかと思いますので、ご了承くださいね。
あゆ at 2006年02月27日 12:12





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