2008年04月02日
カフェにて
『死んでおわびだって? 変な大人の真似をするんじゃない! 卒業式で、「大好きな学校」と唱和すべきところを「大嫌いな学校」と言ってしまった小学生が自殺した。思わず出たか、わざとだったか、どちらにしてもきみは死ぬべきではなかったのに。先生は好きだ、友人は好きだ、本を読むのもむろん好きだ、だがガッコウが好きだったことなど一度もない。わたしは器用だったのかもしれない。
きみは、「いい子」だったそうだね。そして、「大嫌いな」と叫んだ瞬間、きみのなかに潜んでいたもう一人のきみが顔を出した。まさかきみは、彼に驚いたのか? 誰のものでもない彼、きみが「ぼく」と意識することの決してないきみに? きみは、彼の居場所がないと感じたのだろうか。周りの人が彼を罰したように感じて、彼を守るためにここから逃げたのだろうか。きみは、彼が気に入らなかったのだろうか。大人になれば笑い飛ばせたんじゃないか。きみは、本当に、生きるべきだった。』
書くのをやめ、ノートを閉じて、コーヒーをもう一杯注文する。思えば、わたしが生きてこれたのも奇跡としか言いようのないことかもしれない。わたしが彼の眼を見ることができるのは、わたしがわたしになる前に、彼の眼を見てくれた人がいたからなのか。辛抱強く。彼には居場所があったのだ。
コーヒーが運ばれてきた。カフェが近くにあって良かった。本当に、奇跡のようだ。新聞は古いけれど、大したことじゃない。コーヒーに口をつけながら、ノートをもう一度ひらく。自分の言葉を目にするのは、まるで鏡を見ることだ。それはいつもどこかしら歪んでいながら、どうしようもなくわたしでしかない。妙なものだ。ふと、昨夜の引き出しのなかのノートを思い出した。あの日記の書き手はどこにいるんだろう。
店の隅では、数人の男女がビリヤードに興じている。まるで世紀末ウィーンだ。フロアには議論する人々、取り引きする人々、わたしのように一人でいる者。昨夜のうら寂しい街からは想像もつかないほど、雑然としている。わたしにはとても好ましい。
さて今夜はどこで休もうか。マスターに安い宿はないかとたずねると、地図を描いてくれるという。宿じゃなくて空家だけどね、と渡してくれた簡素な地図の目的地を見て、わたしは微笑みを禁じえなかった――「沖縄文学館」。
------
今日は日記は読まれませんでした。きっと何も書かれてなかったんでしょう。
風はまだ少し冷たいですが、ここ数日で、東京は桜が満開になりました。新年度も元気に過ごしたいものですね。
きみは、「いい子」だったそうだね。そして、「大嫌いな」と叫んだ瞬間、きみのなかに潜んでいたもう一人のきみが顔を出した。まさかきみは、彼に驚いたのか? 誰のものでもない彼、きみが「ぼく」と意識することの決してないきみに? きみは、彼の居場所がないと感じたのだろうか。周りの人が彼を罰したように感じて、彼を守るためにここから逃げたのだろうか。きみは、彼が気に入らなかったのだろうか。大人になれば笑い飛ばせたんじゃないか。きみは、本当に、生きるべきだった。』
書くのをやめ、ノートを閉じて、コーヒーをもう一杯注文する。思えば、わたしが生きてこれたのも奇跡としか言いようのないことかもしれない。わたしが彼の眼を見ることができるのは、わたしがわたしになる前に、彼の眼を見てくれた人がいたからなのか。辛抱強く。彼には居場所があったのだ。
コーヒーが運ばれてきた。カフェが近くにあって良かった。本当に、奇跡のようだ。新聞は古いけれど、大したことじゃない。コーヒーに口をつけながら、ノートをもう一度ひらく。自分の言葉を目にするのは、まるで鏡を見ることだ。それはいつもどこかしら歪んでいながら、どうしようもなくわたしでしかない。妙なものだ。ふと、昨夜の引き出しのなかのノートを思い出した。あの日記の書き手はどこにいるんだろう。
店の隅では、数人の男女がビリヤードに興じている。まるで世紀末ウィーンだ。フロアには議論する人々、取り引きする人々、わたしのように一人でいる者。昨夜のうら寂しい街からは想像もつかないほど、雑然としている。わたしにはとても好ましい。
さて今夜はどこで休もうか。マスターに安い宿はないかとたずねると、地図を描いてくれるという。宿じゃなくて空家だけどね、と渡してくれた簡素な地図の目的地を見て、わたしは微笑みを禁じえなかった――「沖縄文学館」。
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今日は日記は読まれませんでした。きっと何も書かれてなかったんでしょう。
風はまだ少し冷たいですが、ここ数日で、東京は桜が満開になりました。新年度も元気に過ごしたいものですね。
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この記事へのコメント
久々に拝見しまして驚きましたよ。
頭の中が「!」と「?」でいっぱいになりました(笑)。
これからどんな展開になっていくのか楽しみにしています。
頭の中が「!」と「?」でいっぱいになりました(笑)。
これからどんな展開になっていくのか楽しみにしています。
ヒロコ at 2008年04月24日 20:22
ああっ、たしかに最初にこの記事だけ読んでも意味不明ですよね(前の記事もかも)! でも楽しみにしていただけてうれしいです。この旅人には、早くまた「沖縄文学館」に来てくれって伝えときます。
あゆ at 2008年04月27日 14:24
一瞬、何処なのか?
躊躇しながら、読みました・・・
”既成概念”って、
ツマラナイ持ち主なもので・・・
しかし、
何処かで、
何かを期待しているのかも知れません・・・・
違った引き出しの中を・・・・
躊躇しながら、読みました・・・
”既成概念”って、
ツマラナイ持ち主なもので・・・
しかし、
何処かで、
何かを期待しているのかも知れません・・・・
違った引き出しの中を・・・・
パイパティローマ at 2008年05月02日 22:29
パイパティローマさん、率直な感想をありがとうございます。これからもこんな調子で不定期ですし、内容もご期待に添うのは難しいかもしれませんが、どうぞよろしくお願いいたします。
あゆ
at 2008年05月04日 06:09
at 2008年05月04日 06:09




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